「高血圧」と聞くと、どうしても中高年の問題に思えないかな。けれど最近は20代や30代でも「血圧が少し高め」と言われる人がじわじわ増えている。まだ病気と診断されるほどではないが、油断すると将来のリスクを高める帯域──それが俗に“高血圧予備軍”と呼ばれる状態だ。
今日はその背景と、気づいたときにどう行動すればいいかを整理してみよう。
目次
「高血圧予備軍」って何?
まずは用語の整理から。血圧の分類は日本高血圧学会のガイドラインに基づいていて、診察室で測った場合はこう分けられる。
区分 | 収縮期(mmHg) | 拡張期(mmHg) | コメント |
---|---|---|---|
正常 | <120 | <80 | 健康的な基準 |
正常高値 | 120〜129 | <80 | “予備軍”に相当 |
高値血圧 | 130〜139 | 80〜89 | 放置で高血圧へ移行しやすい |
高血圧 | ≥140 | ≥90 | 受診・治療の対象 |
この「120台後半〜130台前半」のゾーンは、自覚症状がほとんどない。でもそのまま10年、20年と積み重なると動脈硬化や脳・心臓の病気のリスクが一気に高まる。だからこそ“今から生活を整えれば防げる”領域とされているんだ。
若者にも増える背景
どうして若い世代でも“血圧高め”が目立ってきたのか。理由はいくつか重なっている。
- 食生活の変化
外食・コンビニ・加工食品の利用が多く、塩分過多になりやすい。さらに野菜や果物不足でカリウムが足りず、血圧調整が乱れる。 - 運動不足
リモートワークやオンライン授業、長時間のデスクワークで歩数が激減。筋肉が減ると血管の柔軟性も落ち、血流が滞りやすくなる。 - 睡眠不足とストレス
夜更かしやスマホ依存で睡眠の質が下がり、交感神経が優位になって血圧が上がりやすい。学業や仕事のプレッシャー、不安も背景にある。 - アルコール・タバコ・エナジードリンク
少量のアルコールや喫煙でも血圧を押し上げ、習慣化するとリスクが積み上がる。カフェインの多いエナジードリンクも短時間で血圧を上げる要因になる。
社会の構造が押し上げている
ここで大事なのは「個人の怠慢」だけでは説明できないことだ。
- 食環境:安価で手軽なファストフードやカップ麺が身近にあり、減塩が難しい。
- 仕事・学業環境:夜型生活、長時間の座位が常態化。
- デジタル疲労:ブルーライトやSNS疲れで交感神経が刺激され続ける。
つまり社会の仕組みそのものが、若い世代を“血圧高め”の方向へ押している。ここを理解してこそ「自己責任」ではなく「環境調整」も考えられる。
気づきのサイン
若者の高血圧は静かに進む。頭痛や肩こり、だるさは誰でもある症状だから見逃されやすい。
注目したいのは次のポイントだ。
- 健診で「血圧やや高め」と言われた
- 家庭血圧で120台後半〜130台が続く
- 外食・夜更かしなど生活習慣に思い当たる要因がある
これらがそろったら「今なら変えられるサイン」だと思っていい。数値そのものに怯えるより、行動を少しずつ見直すチャンスにしてほしい。
今日からできる生活の工夫
血圧を整えると聞くと「塩分をゼロにする」みたいな極端な方法を想像するかもしれない。でも実際に続けやすいのは、小さな工夫を積み重ねることだ。
- 食事:塩分を減らすより、野菜や果物を増やすほうが実は効果的。カリウムがナトリウムを体の外に押し出してくれる。
- 運動:ジムに通わなくてもいい。1日30分のウォーキング、エスカレーターを避けて階段を使うだけで血流が改善する。
- 睡眠:寝る前30分はスマホを閉じる。ブルーライトを浴びないだけで入眠がスムーズになり、夜間の血圧も安定する。
- ストレス対策:1日数回の深呼吸や、肩回しのストレッチ。交感神経をリセットするだけでも血圧の揺れは変わる。
若者におすすめの「小さな工夫」
習慣 | 具体例 | コメント |
---|---|---|
食事 | 野菜を1皿追加、果物を間食に | カリウムで血圧安定 |
活動 | 昼休みに10分歩く | 血流改善・気分転換 |
睡眠 | 寝る前のブルーライト遮断 | 入眠スムーズに |
ストレス | 1日数回の深呼吸 | 自律神経を整える |
年齢と性別の違い
高血圧は「年をとってから」と思われがちだが、若いうちからの積み重ねで差がつく。
- 男性は若年期から血圧が高めに出やすい。20代で「正常高値」に入っている人も少なくない。
- 女性は若いうちは比較的安定しているが、更年期以降に血圧が上がりやすい。
つまり「まだ若いから大丈夫」ではなく、「今の生活が未来をつくる」と考えた方が現実的だ。
ブレイブの体験談
ぼく自身、10代のときに健診で「血圧がやや高めですね」と言われたことがある。当時は外食中心で、夜更かしも多かった。正直「自分には関係ない」と思っていた。
でも少しずつ、昼休みに歩く、夜はスマホを早めに切る、インスタント麺の回数を減らす──そんな小さな工夫を重ねてみた。数か月後には数値が安定し、体調も軽くなった。
「血圧が高め」と言われたのは脅しではなく、未来を守るサインだったんだと今は思っている。
まとめ
“高血圧予備軍”は中高年だけの問題じゃない。
若い世代でも、食生活・運動不足・睡眠・ストレス・環境要因が重なって血圧は押し上げられる。
今日できる一歩はシンプルだ。次の食事に野菜をひと皿足す。寝る前にスマホを閉じる。その積み重ねが未来の自分を守る盾になる。
進んだ距離じゃなくて、“気づけた視点”がすごいんだ。
いっしょに歩こう。