「ウィッグって、恥ずかしいもの──なの?」
もし君がそう思っていたなら、それは“誰かが決めた価値観”かもしれない。
ぼくはね、こう思ってる。
「装備って、自分を隠すためじゃなく、“守るため”のものだと思う」って。
鎧も、マントも、魔法の道具も。
どれも“本当の自分”を偽るためじゃない。
“そのままの自分”でいられるように、支えてくれる装備なんだ。
ウィッグも、きっとそう。
それがあることで、また一歩踏み出せるなら──
それだけで、すごく意味のある“装備”だと思うんだ。
目次
最初は“自分に嘘をつく感じ”がした
ウィッグを初めてつけた日。
その感触が、自分のものじゃないように感じた。
鏡に映ったのは、たしかに“自然に見える自分”。
でも、なぜか胸の奥が、ざわざわした。
「これ、ほんとうにわたし?」
ウィッグは似合っていた。
むしろ、前より表情が明るく見えたかもしれない。
それでも、心のどこかで「これは“偽物”じゃないか」と
責めてしまいそうになる自分がいた。
そんな自分を否定したくなくて、
でも、“自分らしさ”が分からなくなって、
心の中で何度もぐるぐると言葉が渦を巻いた。
それでも──
そのまま外に出たとき、
不思議と、歩けた。
人目が気になっていた場所を、
少しだけ“胸を張って”通れた。
風が吹いたとき、ウィッグが揺れた。
その瞬間、あたたかい涙がにじんだ。
「あ、自分を守ってくれてるんだ」
ウィッグは、“本当のわたし”を否定するものじゃなくて、
“今のわたし”が、また社会と繋がるための架け橋。
それに気づいたとき、
「つけてよかった」と、心から思えた。
変化は、周りじゃなく“内側”から始まる
ウィッグをつけ始めてしばらく、
周囲の視線が気になって仕方なかった。
「ウィッグ、バレてないかな……」
「不自然じゃないかな?」
「頭、浮いてない?」
通勤中、友達と会った日、カフェのレジ──
どこにいても、心のなかで小さな警報が鳴っていた。
でも、ある日ふと思った。
「……あれ、誰も気づいてない?」
実際、誰にも指摘されなかった。
変な目で見られることもなかった。
それなのに、自分だけがずっと怯えていた。
──気づいた。
「これは、外の問題じゃない」
「“自分が、自分を許していなかった”だけなんだ」
“ウィッグを使う自分”を受け入れられていなかった。
自分のために選んだものなのに、
どこかで「逃げてる」「偽ってる」と思ってしまっていた。
だからこそ、ブレイブとして、ぼくは言いたいんだ。
「変化って、誰かに気づいてもらうものじゃない。
まず、自分が“気づいてあげる”ことから始まるんだよ」
「大丈夫だよ」って、自分に言えるようになった日、
ウィッグは“仮面”じゃなく、“仲間”になった。
使ってよかったと思える瞬間
・久しぶりに、おしゃれして出かけた日。
・鏡の前で、笑顔を確認した朝。
・写真に映って、「わたしらしいね」って言われた瞬間。
それらの体験は、どれも“髪”の話じゃなかった。
それは、「わたし、“わたし”に戻れてる」と感じた証だった。
髪は、自己表現の一部。
でも、もっと大切なのは、“その髪を扱う心の状態”だった。
ウィッグがくれたのは、「安心」だった。
誰かに好かれるためじゃなく、
誰かに気づかれないためでもない。
「わたしが、わたしを好きでいられる」ための道具だった。
そのことに気づいた瞬間、
ちょっと泣いて、ちょっと笑って──
「使ってよかった」と、また思えた。
“隠す”じゃなく、“守る”。それがウィッグの力
ウィッグは、決して“ごまかす”ものじゃない。
髪の代わりになるだけじゃない。
自分を守る、やさしい“装備”なんだ。
ファッションみたいに楽しむ人もいる。
医療用として必要な人もいる。
でも、どの人にも共通するのは、
「その日、ちゃんと社会と繋がれる自分でいたい」という願い。
ウィッグは、その願いを支えてくれる。
最初は違和感があってもいい。
ちょっと怖くても、戸惑っても大丈夫。
それでも、「使ってよかった」と思える日は、
必ずやってくる。
装備は、君を“変える”んじゃない。
君の中にある“火種”を、もう一度灯してくれるんだ。
もし今、「つけてみたいけど勇気が出ない」って思っているなら──
ぼくは、そっと言いたい。
「ウィッグは、“君を隠すもの”じゃないよ」
「君の“らしさ”を守る魔法の道具なんだ」って。
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