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「寝酒すると眠れる」は本当?
「お酒を飲むとすぐ眠れるんだよね」──そんな声をよく聞く。確かに寝酒をすると布団に入ってからの入眠は早い気がするし、気持ちよく眠りに落ちたように感じることもある。
でも、その眠りは本当に質の良いものなんだろうか?
朝スッキリしない、夜中に目が覚めてしまう、日中眠気が強い……そんな経験があるなら、それは「寝酒の罠」かもしれない。
この記事では、アルコールが睡眠に与える影響を科学的に整理し、「なぜ寝酒が睡眠の質を悪化させるのか」をわかりやすく解説する。
アルコールで眠気が来る仕組み
アルコールには中枢神経を抑える作用があり、リラックス効果とともに眠気を感じやすくなる。だからこそ「寝酒をすると寝つきが良い」と思う人が多い。
けれどこの眠気は、自然な眠気とは違う“仮初め”のものだ。
- 入眠は早まるが、睡眠が浅いまま始まりやすい
- 深い眠りに入る準備が整わない
- 鎮静による「意識の低下」であって、体が休まる眠りではない
つまり「眠った気がする」のは一時的な作用にすぎない。眠りの質を高めるどころか、むしろ不安定な状態で眠り始めてしまっているんだ。
睡眠の構造に起こる変化
人間の睡眠は「ノンレム睡眠(浅い→深い)」と「レム睡眠(夢を見る眠り)」を繰り返すことで成り立っている。寝酒をすると、このバランスが大きく崩れてしまう。
- 前半:アルコールの作用で深いノンレム睡眠(N3)が一時的に増える
- 後半:代謝が進むにつれて睡眠が浅くなり、中途覚醒が増える
- レム睡眠:本来は90分周期で訪れるが、アルコールによって減少・分断されやすい
その結果、夜を通しての「安定した睡眠リズム」が乱れてしまう。
アルコール摂取と睡眠段階の変化
睡眠段階 | 通常 | 寝酒あり |
---|---|---|
ノンレム深睡眠 | 安定して出現 | 前半は増えるが後半は減る |
レム睡眠 | 規則的に出現 | 減少・分断されやすい |
中途覚醒 | 少ない | 増える |
つまり、寝酒の眠りは「最初だけ深いが、後半で崩れる」特徴を持っている。これが「朝のスッキリ感がない」理由のひとつなんだ。
翌日に残る影響
寝酒の一番の落とし穴は、「翌日」に現れる。
- 熟睡感の低下
夜中に細かく目が覚めることで、眠りの満足度が下がる。 - 日中の眠気
深い眠りやレム睡眠が削られると、脳が十分に休まらず、日中に強い眠気が残る。 - 集中力・記憶力の低下
レム睡眠が分断されると、記憶の整理や学習の定着が妨げられる。 - トイレの回数が増える
アルコールの利尿作用で夜間のトイレが増え、さらに睡眠を分断する。
さらに補足すると、アルコールは喉の筋肉をゆるめるため、いびきや睡眠時無呼吸を悪化させることもある。寝酒の翌朝に「頭が重い」「体がだるい」と感じる人は、こうしたメカニズムの影響を受けているんだ。
習慣化のリスク
時々のお酒はリラックスにつながることもある。でも「眠れないから毎晩寝酒」という状態は危険信号。
- 耐性がついて量が増える
最初は1杯で眠れても、次第に効果が薄れ、量が増えていく。 - 悪循環に陥る
寝酒で睡眠の質が下がる → 翌日つらい → また寝酒に頼る。 - 健康リスクが重なる
肝臓・心血管・メンタルへの負担が積み重なる。
寝酒は「眠りの近道」に見えて、実は「眠れない夜を増やす遠回り」なんだ。
寝酒に頼らない眠りの工夫
「じゃあどうすればいい?」と思うよね。ぼくが実際に役立った工夫を紹介するよ。
- お酒は寝る2〜3時間前までに
代謝がある程度進んでから布団に入ることで影響を減らせる。 - 夜はカフェインを控える
コーヒーやエナジードリンクは眠気を遠ざける。午後以降は注意。 - 就寝前のルーティンを作る
読書やストレッチ、深呼吸など「眠りの合図」になる行動を決める。 - 眠れないときは“横になるだけでもOK”と考える
無理に眠ろうとせず、休息を取るだけでも体は回復していく。
寝酒の代わりにできる習慣
方法 | メリット | ポイント |
---|---|---|
就寝前の読書 | リラックスできる | 明るすぎない灯りで |
軽いストレッチ | 筋肉の緊張をほぐす | 深呼吸と組み合わせる |
白湯やハーブティー | 体を温め落ち着かせる | カフェインレスを選ぶ |
お酒に頼らなくても「眠れる準備」はできる。大切なのは、自分のリズムを整える小さな工夫を積み重ねることだ。
まとめとエール
- 寝酒は入眠を早めても、後半の睡眠を乱し、深い眠りとレム睡眠を奪う。
- 翌日の眠気や集中力低下、熟睡感の欠如につながる。
- 習慣化すると量が増え、健康リスクも重なる。
- 鍵は「お酒に頼る」のではなく「眠れる環境をつくる」こと。
眠りはアルコールでは補えない。環境と習慣に支えられて、自然と訪れるものだ。
眠れない夜があっても大丈夫。大切なのは、少しずつ“眠れる夜”を増やしていくこと。寝酒のグラスを閉じて、自分の体を整える一歩を踏み出せば、朝はもっと軽やかに迎えられる。